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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

そして月日が経つにつれ
ソウタさんの世間話に新たな話題が出てくる。


『俺、引っ越したんだけどよォ~…』




『……ぇ』

地元に帰っても…ソウタさんがいない。


いや、元より私は
地元にはもう帰れないだろう…


だけど

故郷にいた人が
どこかにいってしまうって

すごく寂しかった




『…どこ…に?』



『~…アイル~?お前、帰ったら
何かしたい事あるかぁ~?』



ソウタさんは私の質問には答えなかった

近くではないのだろうな……。




『べつに…』




『ひとつくらいなんかねぇのかァ~?
言ってみろ~?ハハハ』
















『……死にたい』



『…』





時に私は…ソウタさんの気も知らず
気持ちも考えず
平気でそんな事も言っていた。




『死にたい…

おじいちゃんのトコ、いきたい…』








『……。~~バカヤロ、オメェ~…院長はな
お前の…じいさんはナァ…!

あの歳まで頑張って
成すべきを成してから逝ったから
今ムコウでのんびりいられんだゾォ?

~今お前が、くっついて逝っても
じぃーさんに、どやされて追い返されんぞ!?

オマエはこれからまだまだ…
~ったく

イイ若いモンが、フザケタ事ぬかして
バカヤロ オマエ~』




そんな風に困らせる私を
ソウタさんはめげずに

独自のやり方で
持ち前の性格で励ましてくれた。



そして



『アイル、お前~…

やりたいことねぇならな

……俺んトコ来い。な?』





『……?』




『俺ぁ引っ越したって言ったろう?
デカイ家建てちまってナァ!!!

そこで俺、仕事始めっからよォ!

お前~一緒に来て手伝ってくれ?な?
部屋も余ってるからよぉ~♪な?』




『……は?…』



ポカンとする私を見て
ガハガハとソウタさんは豪快に笑う。




『お前の両親と話もしてあるからよォ…

迎えに来るからなァ?』




帰る家も……身寄りさえなくした私に

帰る場所を作って

待っていてくれたのは


他でもない、ソウタさんだった。






施設の中で18歳の誕生日を迎え
半年ほどするころ

私は出所を迎えた。


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