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密猟界

第7章 美しき獣たち

 ぐたりと椅子の背に体をあずけるユノに、「どうしたんです」「いい…よ」ナイフを遠くに放り、チャンミンは新しく注いだワインを、飲み干す。「ユノが話が無いんなら」グラスを置き、「僕が話しますね」空になったワイン・グラスに、夕映え色のチャンミンの黄金の髪が、反射して煌めいた。
 「昔の話しましょうよ。ユノ」栗色の髪は、微動だにしない。チャンミンは、フッとため息をする。
「どうして僕だったんですか、ユノ?…」「……」「成り行き。いきがかり上、やむを得なかった。ま─そんなところでしょうね」云ってチャンミンは、軽く頭を振った。 「あの頃…ね」上を向くと、口元に小さな笑いがあった。「今よりふたりきりだった気がする」……「良かったな、不運だったけど」少しだけ笑って、「しあわせだった気がする。今思うとね」 ─また、ため息を吐く。「ユノが」ちらりと横目で、うつむいた小さな顔を見やる。「裸の僕の胸で」目を伏せるユノ。「アポジ、アポジって繰り返し泣いて」フゥッと息をついた。「僕その時、何もかも許せる気がした」 




















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