
密猟界
第7章 美しき獣たち
両手が壁を擦るように動き、せわしない息を吐くユノはやがて、顔を壁に押し当てて野獣のように吼える…。
「もうひとくち、どうですか」
横を向いたユノは、黙って首を振る。
銀のスプーンが、グラタン皿の脇に置かれ、柄が上からの光を跳ね返し輝く。
「食欲無いなら、ワイン飲みます?」ユノの返事を待たず、葡萄色の瓶がテーブルに載せられた。「おれはいい」「少しは飲んで…」ワイングラスを満たす深紅。「ユノ?」血の気の無い口元に、グラスが震えながら運ばれる。─…そのグラスをそっと、チャンミンは取り上げ、自分の口に運んだ。
「チャンミン」「はい?」「どうして、お前…」全裸のユノは、繊細で炎のような美貌を窺いながら、独り言の口調で云う。
─チャンミンが、傍らのナイフをいきなり、ユノめがけて、振り上げた。
グサリと刺さる刃は、ユノの椅子に赤い蠍を留めている。「ユノを刺そうなんて、悪い蠍だ」深く息を吐くユノ…チャンミンはナイフを引き抜き、床に落ちもがく蠍を、踵で踏み潰した。赤い血のようなものが、あたりに飛び散る。
「もうひとくち、どうですか」
横を向いたユノは、黙って首を振る。
銀のスプーンが、グラタン皿の脇に置かれ、柄が上からの光を跳ね返し輝く。
「食欲無いなら、ワイン飲みます?」ユノの返事を待たず、葡萄色の瓶がテーブルに載せられた。「おれはいい」「少しは飲んで…」ワイングラスを満たす深紅。「ユノ?」血の気の無い口元に、グラスが震えながら運ばれる。─…そのグラスをそっと、チャンミンは取り上げ、自分の口に運んだ。
「チャンミン」「はい?」「どうして、お前…」全裸のユノは、繊細で炎のような美貌を窺いながら、独り言の口調で云う。
─チャンミンが、傍らのナイフをいきなり、ユノめがけて、振り上げた。
グサリと刺さる刃は、ユノの椅子に赤い蠍を留めている。「ユノを刺そうなんて、悪い蠍だ」深く息を吐くユノ…チャンミンはナイフを引き抜き、床に落ちもがく蠍を、踵で踏み潰した。赤い血のようなものが、あたりに飛び散る。
