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密猟界

第7章 美しき獣たち

「閉めます」チャンミンは軽々と、巨大な石板に似たドアを閉じた。古代の神王の石棺の蓋を思わす……「お前、力あるな」「怪力サムソンですか」笑いながらユノは「俺を持ち上げられそうかな?」チャンミンの腕に触れる。
 


 キチネットに入るとユノは、カウンターのりんごを手に取った。「ビストロが、りんごになった」両手で半分に割って、噛りながらもう片方をチャンミンに差し出す。
 「ビストロは僕がしますよ、ユノ」ひとくち噛り、「牛のタンのシチューにします」「ご馳走だ。材料ある?」「缶詰ですから、簡単です」「牛の舌の? 面白いな」「コック・テイルにしますか。牛のしっぽ」りんごの果汁を手で拭い、ユノが笑いだした。



 「うまかった、腹いっぱい。眠くなった」ワイン瓶を脇にやり、「シャワー浴びて、ユノ」チャンミンは微笑み、「脚も温めれば、疲れとれますよ」「そうするよ」小さなあくびをユノはした。
 「ところで、ユノ」椅子に寄り掛かり、気怠げな様子にじっと目を当てて、「あの十字架のお墓…」「うん」「あの迷路みたいなところ。僕たちみたいにグルグル回っていて、行き倒れたひとが眠ってるんじゃないでしょうか」

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