テキストサイズ

密猟界

第2章 雨の外へ…

 ……チャンミンの背中ごしに、真っ暗闇のように重いロングヘアを垂らした女が、チャンミンに何か口をパクパクさせて、頭も動かしていた。 草色のセーターを着ていた。
 ……また、ジャラジャラと鍵束を動かし、鳴らすような金属音が、した。
 ややあって、チャンミンが後ろ向きのままで、ゆっくりと硝子の引き戸から身体を、外へに出してきた。
 引き戸は閉じられた。女の影はそれで見えなくなった。
 銀の盆を手にしたチャンミンが、また廊下を横切って、礼拝堂に入ってくる。

 ──「ホット・チョコレートです。ユノ、飲んで─温まりましょう」円形の盆には、二人分のカップとクッキーが、あった。
「あ、美味しそうだね…」「冷めないうちに─飲みましょう」カップからひと口だけ飲んだユノに、「クッキー、焼きたてみたいで。…温かい…」ユノの手のひらに、のせる。「─うん」噛み砕いた。「まさかね。あのさっきの女のひと」「はい─?」「怒鳴ってたのは、男だった…ね?」ホット・チョコレートをチャンミンが飲み干す。「これ、良い味。…お代わり、貰えるかな」「…うん?」ユノはカップの底を、覗いた。「今度は紅茶…。がいいのかなぁ」「あの…、あの…チャンミン─?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ