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密猟界

第2章 雨の外へ…

 激しく、降っていた雨の音も聴こえてこない。「ほんとに…。誰もいない?」俯いて痛む膝を撫でていたユノが、ぼそっと呟くと、チャンミンが「さっきの人を、探してきます」天使の刺繍のクッションを、置きなおし、ユノの濡れた前髪を両方の手の指で梳かすと、ユノの雨の匂いの残る額に、天使の羽根が触れるように口唇を軽くおき、チャンミンは立ち上がった。



 「チャンミン」礼拝堂の右手奥、半円型のステンド・グラスの嵌められた引き戸に、チャンミンは手を掛けた。ステンド・グラスは、白い鳩とキューピット。キューピットはブロンドの巻き毛が愛らしかった。「チャンミン─」「はい。温かいお茶…ふたり分、貰ってきます」笑い顔でユノに振り向くチャンミン。
 チャンミンの上背のある後ろ姿が、入り口の戸に消え、ステンド・グラスを透して、廊下の向こうのガラス越しに、チャンミンの横顔と肩から胸の辺りの線が、ユノには見える。



 (チャンミン…チャンミン)
 チャンミンの影に隠れていた黒っぽい人のかたちのものが、チャンミンに向く。…と、ガシャンと金属音が、物が壊れたように、鳴り響く。

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