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Baby love

第24章 動き出す。




初めて恋人を家族に紹介したのは、大学生の時。
相手は絵に描いたようなお嬢様で、サラサラの長い黒髪が俺のお気に入りだった。



半年程で別れたが、当時は別れを切り出された理由が分からなかった。
デート中に、なんとなく別れ話になったんだ。
寂しそうに笑う彼女の気持ちが分からなかった。
何で振る方が悲しそうなんだとただ不思議だった。



俺の部屋から出て行く彼女の後ろ姿を見て、ホッとした自分に少しの罪悪感を覚えた。
好きだったはずなのに、と戸惑いもあった。



彼女と別れた事を告げると、
母さんはすごく残念がっていて。
父さんは呆れていた。
家族に紹介してから数ヶ月で別れてしまった事に、男として格好悪いなとバツの悪い思いもした。



その後、恋人となった女性と長く付き合いが続くように努力をしているつもりだったが、どの恋愛もあまり長続きはしなかった。



そして、それはどれも退屈な恋愛ばかりだった。



告白をして、デートをして、キスをして、セックスをして。
そこまでステップアップすると、その次からどうして良いのか分からなくなるんだ。



単調な会話ばかりで面白くもないデートを重ねる事に憂鬱になってくる。
貼り付けた笑顔で笑う自分に疲れてくる。



家族に紹介した子もいたが、
やっぱりその後は別れが来る。
その度に、母さんと父さんをガッカリさせているのではないかと思った。
だから、そのうち全く紹介はしなくなった。



どうせ俺の恋愛は長続きしないんだ。



だいたい、アイドルとして働く自分は結婚もそう簡単には出来ないんだ。
なら俺と付き合うメリットなんて、相手には何も無いんじゃないか?
別れた方が相手の為だろう、なんて。



相手を思いやる気持ちなんてこれっぽっちも持っていないくせに、優しい男の振りをして彼女たちに別れを告げてきた。



そして、俺は恋愛を諦めた。
こんなに面倒な物は必要ないと思ってしまったんだ。
有り難い事に仕事が忙しくて、目の回るような毎日。




恋人を作らないと決めてから、気持ちが軽くなって仕事がよりはかどった。
自分は恋愛には向いていない、
仕事に生きるべき人間なんだと本気で思った。




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