
Baby love
第24章 動き出す。
・・・今なら分かるのに。
俺はただの馬鹿だったんだって。
俺は、これまでの恋人にちゃんと向き合っていなかった。
恋愛がどういうものかも分かっていなかった。
ずっと近くに居た潤にも気づかないくらい、馬鹿だった。
S「・・・時間通り。」
こんなにスムーズに仕事が終わったのは、あの見合いの日以来だな。
腕時計を見て、思わず苦笑いになる。
見合いを潰しに来た潤に、ただパニックになって騒いでいた俺。
今思い出しても格好悪い。
でも、悪くはなかった。
カッコつけてばかりだった俺の仮面を次々と剥いで、アイドルでもなんでもない俺に愛情を向けてくれる潤。
きっと、ずっと前から・・・。
そして、それは俺も同じだったんだ。
当たり前のように隣にいる潤が、何よりも大事で愛おしかった。
待ち合わせの場所には、すでに潤が居た。
ぼんやりと空を見上げる横顔に見惚れそうになる。
キレイな男だな、ホントに。
目の前に車をつけると、潤が笑顔で運転席の俺を覗いた。
M「早かったね!」
S「おう。」
助手席に乗り込んだ潤を少し引き寄せると、真っ赤になって驚いて身を反らす。
M「誰が見てるかわかんないよ・・・っ、」
ああ、愛しい。
こんなに可愛くて素敵な恋人を家族に紹介出来るなんて、俺はなんて幸せ者だろう。
S「緊張してる?」
M「・・・まぁ、ね。」
ユックリと車を発進させながら、そっと手を繋ぐ。
温かい・・・
この手は、絶対に離さない。
S「今日はお前を紹介するだけだ。
もし許して貰えなくても、構わないよ。
両親の許可なんか要らない。」
M「翔くん・・・」
S「俺は、お前さえ居れば良いんだ。」
真っ直ぐ前だけを見て、自分に言い聞かせるように言葉にした。
ぐっと握り返してくれた潤の優しい温もりに、なぜか少し泣きそうになった。
もしかしたら俺の方が緊張してるのかもしれないな、なんて思いながら。
実家までの道を、静かに走った。
