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Best name

第2章 ピュアな世界

アイがカフェのカードに何か書いて
オレの方にズイっと滑らせた

『?』

〃藤沢 愛留〃

『あたし…名刺ないから…』

そう言いながら
アイが帰り支度を始めようとする


〃フジサワ… …? …?〃




『アル…? ~…メル?』



読めそうなカナを投げかける
アイが不快そうな顔で答えてくる。


『アイル…』


ぶっきらぼうに答えてアイは立ち上がる。



『アイルちゃん。良い名前じゃない。…?』
『…ソータさん、私戻る』


オレを見上げスルーして向きを変える


『戻るって…もう上がれよ、それに…』
『マロンたち散歩いくから』



『~今日はいいから、帰るなら休め
オレが後で行くから』

『……お先です』

聞かずにアイは店のカギをとって出ていった

…"アイ"で呼んどくのがイイのかな、まずは。


『…怒らせちゃいましたかね…?』


バツが悪くなってソウタさんに助けを求めた。


『ん~…いや気にしないで
基本あんなカンジの子だから』


まぁ…わかるが


『そんな…嫌がるような名前ですか…ね?』

食い下がってしまった。


『~ん~、さぁ?年頃の女の子だからね
色々あるんじゃないか?
オッサンにはわからないさ…~(笑)』


…少し…読めてきた
このオッサン、絶対知ってるだろ。

オレが思ってるよりずっと…色んな事を。
しばらく世間話を交えながら
アイル…アイの事を聞いてみたが

オレがアイと、そう親しい人間じゃないと
わかっているのだろう

当たり障りなく
プライバシーに関わるような事は
テキトーに上手くかわされ
オレもそれ以上聞かなかった。

上手く…立ち回る人だ
経営者としての側面にも興味が深くなる。
聞く話はとても面白かった。


…一番聞きたいナゾは残るが


『~でさ…ホントは、どこで会ったの?アイと』

『え…?…』

あのフザけた軽いノリの感じから少し変わって
試すようにオレをみる。

『ウソだろ?さっきの』

ニヤニヤ…

見透かした風にニヤケてくる
…やっぱ少しニガテかも知れん。

『…すんません、半分くらいは』

『ハハハッ!まぁ、いいさ
珍しい事もあるモンだと思っただけだよ
~あの子がトモダチ連れてくるなんてね』

"トモダチ"ね…
オレが殆ど勝手に関わったと言うか
たまたま現れただけだが。

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