テキストサイズ

ビタミン剤

第13章 ぼくのペット

Jside


「じゃあ、俺のネクタイはどこ?」

抱きしめてくれる翔さんがおだやかな声でたずねてくる

ポケットの中から取り出した今朝カイザーとやり合った原因のネクタイ。
噛まれてて少し毛羽立ってるけど丁寧に巻いておいたそれを翔さんに差し出した。


「俺、今朝写メ送ったよね。
今日のネクタイは潤のプレゼントしてくれたやつを着けて収録したんだよ。」

「うん、わかってる。
ベッドの上で携帯を見たときすごく嬉しかった。」

「だったら、別にそれに拘らなくても。」

擽るように優しく髪を撫でてくれながら微笑みかけてくれる


「出かける時に声かけてくれないのは少し寂しかったけど、ゆっくり寝かしてくれてる翔さんの思いやりだってわかってたし。でも…」


「でも?」


指と指を絡める恋人繋ぎ
俺の右手をぎゅっと握ってくれる。俺の心の狭さやイヤな部分も翔さんのこの温もりと力強さが拭ってくれるから


「でも、このネクタイは俺にとっては大事な思い出があるから。カイザーが咥えてるの見て絶対に…
渡したくないって思った。
だから、気がついたらむりやり取り上げてた。」


「ああ、覚えてくれてたんだ。」

少し照れくさそうな翔さんの声。
鼻の頭をかきながら目を細めてくれる。


初めて俺たちが激しくケンカをした日。


翔さんは誤解だって言ってたのにあの時の俺はまったく耳を傾けようとしなかった。
部屋から出て行こうとする俺をベッドに押さえ付けて両手を拘束して無理やりだけど、
なんとか話しを聞かせてくれようとしてくれた翔さん。
誤解を解いてくれたあの夜、俺を拘束する時に使ったのがこのネクタイだった。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ