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ビタミン剤

第7章 人魚のナミダ



「あのね、潤。今晩また俺の友達の
医者に来てもらうようにするけどいい?」


首を傾けてその言葉の意味をたずねる。


「実は昨日の夜も無理言って来て
もらったんだ。
潤の具合診察してもらったよ。
すっげぇ高熱だったし、
深夜に病院運びこんで騒ぎに
なったりして大袈裟になるのも
嫌かなぁって思ったから。」


翔さんが優しく微笑んでくれる。
その真っ直ぐな眸には俺しか映って
いない。

「なんでもかんでも俺が勝手に段取り
しちゃってごめんね。」


なんで翔さんが謝るの?

迷惑かけたのは、俺で勝手に
おしかけて来て雨の中をふらふらして
倒れたりして。
声にならないもどかしさにまた涙腺が
緩んでしまう。


「潤もう泣かないで。
まだゆっくり休んどかないと。」


顔を覗き込むようにして
涙を拭いてくれる翔さんがいるから
近づいてきた翔さんの唇に
吸い寄せられるように
俺は唇を重ねていった。



ニノの時に感じた違和感。

この数ヶ月でキスした誰とも違う
翔さんのあまい唇。
翔さんのわずかに放れた唇が光って
潤って俺の名前を囁いてくれる。


全身に感じる喜びの震えが
身体中に染み込んでくる感覚。



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