
ビタミン剤
第7章 人魚のナミダ
そこからの記憶はやけにあいまいで
ぐにゃぐにゃした幻影のようなもの
でしか覚えてなくて。
たまらなく熱くて呼吸が苦しくなっていた
ときも翔さんの顔が見えてた気がしてた。
時折見えた明るさの中に
いつも翔さんの顔が見えてた気がして
すごく安心できて、また
すぐ目蓋を閉じることができた。
穏やか眠りの中で
とても温かな夢を見てた気がする。
長い長い眠りは本当に久しぶりの
ふかい眠りだった。
目が覚めて
1番最初に飛び込んできたのは
心配そうな顔をした翔さんの顔。
「潤?目が覚めた、どう
どこか苦しいとこない?」
「………。」
「熱は下がったかな?
ちょっとごめんね。」
翔さんの掌が額に触れてくる。
ぬくもりが伝わってきたと同時に
涙が勝手に溢れてきた。
「ごめん、ごめんな。
さわったりしてごめん。」
翔さんっ
違うっ違うから。
そう言ったつもりだったけど
声にならなくて首を大きく振って
否定してることを伝えてみた。
「どした、潤?
もしかして……声、でないの?」
小さくうなづいて俯く。
翔さんの名前を呼びたくても声が
でなくなってしまってる。
たぶんこれは俺への罰。
