
キラキラ
第31章 イチオクノ愛
パンの焼ける匂いとコーヒーの香りに気付き、パチリと目を覚ました。
もう朝か……
フローリングに小さくうずくまってた体をおこした。
背中をうーんとのばしていると、
「……あ、起きたよ」
と、のんびりした声が、頭上から降ってきた。
見上げたら、部屋着姿のリーダーが、スツールに腰かけてこちらを見下ろしていた。
昨夜みた、色気駄々漏れなリーダーはそこにはいなく、ぼんやりした顔は、いつもの寝起きのそれ。
だるそうにキュウリの薄切りをかじってる。
すると、カウンターキッチンの向こう側から、松兄がひょいと顔をのぞかせた。
そして俺と目が合うと、
「よく寝るヤツだな」
と、皮肉げに笑った。
……誰のせいだ、誰の!
つっこみながら、俺は、ふと昨日の二人を思い出し、ポッと顔を赤らめてしまいそうになった。
ほらよ、と、松兄がマグカップを差し出し、ありがと、とふにゃりと笑って受けとるリーダー。
見た感じはいつもの二人なんだけど。
あんなことしてるとこ見た後だと、これから、細かいことにも、変にいちいち反応しちゃいそうで怖い。
マグカップに口をつけるリーダーの唇は、昨夜濡れるような甘い吐息をもらしてた……。
松兄のうでまくりしたシャツの袖からみえるたくましい腕はリーダーの腰を支えてて……
ひーーーっ!!
思わず顔を伏せたら、
「……なにしてんのお前」
松兄の冷静な声がして、ハッと顔をあげた。
すると松兄が、しゃがんで俺を見下ろしていた。
手には小さな紙皿。
「おもしれーな。お前。……ハムサンド食ったんなら玉子サンドも食えるだろ。ほら」
うん!食える!
うんうんと頷いて口をあけたら、松兄がははっと笑ってその皿を床においてくれた。
「……犬って意外となんでも食うんだな」
「そーだね」
楽しそうにしゃべりながらコーヒーを飲む二人に、俺はいつか、ちゃんとしたこと教えてあげなくっちゃ、と心に誓いながら、松兄の手作りのサンドイッチを食べた。
うまい……うまいけど!
ほんとの子犬はサンドイッチなんか、食わねーからね!!
