
キラキラ
第29章 バースト7
翔が焼いたパンケーキに、智さんが泡立てた生クリームを添え。俺が飾ったフルーツで、どこぞのカフェのようなプレートが完成した。
かずが入れてくれたカフェオレで、みんなで、いただきます、と、手をあわせる。
「あ、おいしー」
「うん、うまいうまい」
「翔、天才だな」
「…褒めてもなんもでねーよ?」
口々にみんなに褒められた翔は満更でもない顔で、リスのように口一杯にパンケーキを頬張ってる。
いっつもスマートでかっこいいくせして、こーいうとこ、子供っぽくて好きだなぁ。
幸せな気分で、キウイの輪切りを口にする。
それはとても甘酸っぱくて。
なんだか、眠り続けていた体が、シャキッと目覚めた気がした。
「送らないで大丈夫か」
大野家のマンションのエントランスで、翔が名残惜しそうに言うから、笑って首を振った。
翔のバイトがある日だというので、早めの解散。
大学に入って始めた、という家庭教師のバイトらしいが、これまた、女子高生の家には行かないでくれ、と、俺は密かに祈ってる。
「……一人で帰らせるのいやだなぁ」
ぶつぶついう翔に、あなたの予定があるから帰るんでしょうが、と突っ込みたくなる。
でも、それも含めてなんだか嬉しい。
それだけ俺を拘束したいってことでしょう?
俺も重症だよなぁ……。
内心舌をだしながら、ちょっと上からからかってみた。
「まだ夕方にも、なってないよ。心配性」
「……チカラ使って帰れよ」
「だーめ。母さんに買い物頼まれてるって言ったじゃん」
「……」
口ごもる翔が面白い。
どんだけ心配性なんだと思う。
女じゃないよ?俺(笑)
「ほら、バイト行く準備しなくちゃでしょ」
「うん……まあな」
「頑張ってね」
「おう」
きゅっと手を一瞬だけ、繋いだ。
そうして、手を振って歩き出した。
