テキストサイズ

キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


「…迷惑かけてるだろうから、智さん家を出ないといけないのは分かってるんだけど…出たくない…だって、行き場所がない…」


かずの震える肩をただひたすら抱き締めて、落ち着かせるように擦った。
小さく嗚咽するかずの姿が、今日1日の彼の頑張りを表しているようにみえた。


「…頑張ったね、かず」


俺は、つとめて穏やかに声をかけた。
少なくとも、お母さんは、かずに会えて嬉しかっただろうと思う。
母親だもの。
どんな経緯があるにしろ、たった一人の息子の顔を見れたことは、良かったと思う。


「…でも、周りに気を使いすぎてると思うよ。自分の心も大事にして」


いつもいつも、遠慮して。
言いたいことの半分も言わないで。
俺の前でも、智さんたちにも、気を使ってばかりのかず。

俺の気持ち届くかな。


「本心を言っていい相手は、恋人だけじゃないんだよ。大事な人にほど、それは大切なこと。…中島さんに、おまえが言った言葉、思い出して?」


好きな人には本音を言わなくちゃって。
誤魔化したくないって。

おまえが言ったんだよ。


かずは、何度も腕で目をこすって、うん、と頷いた。
俺は、かずの両肩に手をおき、うつむいたかずの顔をのぞきこむようにして、噛んで含めるようにゆっくり言った。


「……家に戻るのが苦しいのなら、このまま智さんたちのところにいさせてもらうよう、お願いしてみな?」


お母さんにも。
大野家にも。


「……もし、断られたら?」

かずがひどく不安げな顔で俺をみる。

バカいうなよ。
智さんたちが断るわけないじゃん。

苦笑した俺は、かずを抱き寄せて、安心させるように背中をポンポンとしてやった。
泣いてるかずの体は熱くて。
俺が触れたら、きゅっと体に力が入った。

その緊張をほぐすように、何度も優しく背中をポンポンとして、かずをあやし続けて。


「百パーセントそんなことはないと思うけど。そのときは俺んちにおいで」

「相葉くんちに…?」

「そうだよ。ここに住んだらいい。母さんも大歓迎だよ。見たろ?」


かずが、ようやくふふっと笑い声をあげた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ