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キラキラ

第26章 10カゾエテ  ~Count 10~


キス……


俺が黙ると、翔は、大きく息を何度もついて、自分の体を抱き締めるようにして、またうつむいた。


……そういうことか。
無理矢理された記憶が甦るってーわけか。

だけどさ……俺はそいつじゃねぇぞ。
一緒にすんなよって言いたい。


俺は、ますます冷めた気分になっていくことを自覚する。


だって、自分がそんな輩と同列にあつかわれるほどアウトオブ眼中なのだと、宣言されたみたいなもんじゃん。

きっと、恋人に触れられるのは大丈夫なんだろ?

俺は、自分でも引くくらい冷たい声が出た。



「ファーストキスでもないんだろ。……大野に忘れさせてもらえよ」

「え……?」

「もっとすごいキスしてもらって、上書きしてもらっちまえよ。そんなら、忘れられるかもな」



顔色を失った翔が、呆然として俺を見つめる。

その瞳の色は、責める気持ちと戸惑う気持ちがぐちゃぐちゃにいりまじってるのが分かる。

なんでそんなこというんだって無言で訴えてる。

そんな翔に対して、今まで感じたことないくらい苛立ちが募った。
俺ができないことを、大野はできる、ということが悔しいのだろうと、自分自身思った。



「さっきから、大野、大野……って。なんで?」


それなのに、翔は、ぽつりとこんなことを無神経に聞いてくる。
俺は、一瞬、我慢してた思いが爆発しそうになり、咄嗟に核心をついてしまった。


「なんでって。つきあってんだろ」

「……?誰が?」

「お前」

「誰と?」


こいつっ!


「………大野とつきあってんだろ?!」


思わず怒鳴ってしまった。


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