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キラキラ

第23章 🌟🌟🌟


やっぱり……と、傍でダイゴが呟く。

「どうして……!」

俺は、焦ってミヤさんの肩を揺り動かした。
その細身の体躯は、微動だにせず。
固く閉じた目と、真っ白な顔色は、呼吸をしてるのかもあやしい。

パニックになって、ミヤさんの体を揺する俺を見かねて、ダイゴが俺の肩をグッとつかんだ。

「マサキ様、落ち着いて。……とりあえず、馬車に乗せましょう」

「わ……分かった」

頷くと、横から、ダイゴがそっとミヤさんの体の位置をかえた。  
促されるままに、俺はミヤさんの肩口と、膝の後ろに手を差し込み、抱き上げた。

初めて至近距離に見る、ミヤさんの顔。

傷だらけでも、綺麗な顔にはかわらないけど。
どうせなら笑顔がみたかった。
茶色い澄んだ瞳がみたかった。

初めて彼に触れることができたシチュエーションが、こんなだなんて、辛すぎるよ……。

「ミヤさん……しっかりして……」

囁いて、俺はぎゅっと自分の体にその細い体を抱き寄せ、馬車に急いだ。

その儚いまでの軽さにすら、泣きたくなる。


ダイゴがクッションを並べてくれたベンチ式の椅子に、壊れ物を扱うように、そっと横たえる。

眉毛が苦しそうに寄せられたのに気づき、意識が戻ったのかと、その頬に手を寄せた。


「ミヤさん……?」

「……ぅん……」

「ミヤさん!」

「………サ…トシ…」

小さく小さく発せられた声。
意識が混濁してるみたいで、薄く開かれた目は焦点があってない。

「分かりますか?…ミヤさん?」

ぴたぴたとその頬に触れる。
優しく、怖がらせないように、そっと。
ダイゴもその後ろから心配そうにのぞきこむ。

「……あっ…」

突如、目を見開いたミヤさんは、頭を抱え、小さくうずくまった。
いやいやというように頭を振り、寄るな、と言わんばかりに、体を丸めて、がくがく震えだした。

「やだっ……いやだ…」

「え……っ…ちょっと…ミヤさん?」

怯えるように、体全部で拒否。

その反応に、慌てて体を揺すった。
何があったか分からないけど、今は大丈夫だって教えてあげなくちゃいけない。

「ミヤさん…っ」

「やっ……」

「ミヤさん!」

「サト……サトシ……」

うわ言のように繰り返される名前。
サトシって、誰だよ…っ!

俺は悲しくなる心を押さえながら、ミヤさんに覆い被さり、ぎゅうっと抱きしめた。



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