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キラキラ

第15章 1000回言って

「………さあ……どうする?」


横に座った相葉さんが、優しい声で問う。
俺は、うつむいたまま両手で水滴のついたグラスを握りしめた。
火照った手のひらが、ジンと冷たくなり心地よかった。


「…………とりあえず、ご飯たべて元気だそうか?」



俺は、こっくりうなずいた。
そういや人参しか食べてない。
せっかく相葉さんが作ってくれたのに、もう冷めちゃったな。


顔をあげると、相葉さんは、ふふっと微笑んでいた。
その笑顔があまりに自然で、俺も、少し笑った。


……………笑えた。


それから相葉さんは、


「で、一緒に宇宙に帰れる方法考えてやるよ」


と、大真面目にいうもんだから、俺は、思わずぶっと吹き出した。
相葉さんもつられて、くふふっと笑いだした。


宇宙に帰れる方法。
本当にそんなのあったらいいのにな。



「……………熱」


「え……………?」


「熱があがるから、もう泣くなって」


また潤んできた目元を指摘されて、俺は、へへっと苦笑う。
涙腺がバカになったのか、涙がいくらでもでてくる。

乾いた心に、この相葉さんの優しさが染み渡り、それがまた新たな涙をうむ。
満たされはしないけど、干からびもしない。

すっからかんにならないのは間違いなく、この相葉さんのおかげみたいだ。


「ありがとう……………相葉さん」


小さく言って、またうつむいたら、頭がクラっとした。
思わず隣りにいる相葉さんにもたれかかった。


「二宮?」


クラクラする。

本当に熱があがってきたのかな。

視界も、うすぼんやりと霞がかかってきて、よくみえない。


「二宮」


相葉さんが俺をのぞきこんだのがわかったけど、頭が重くてあげられない。



ああ……………だめだ。



俺は、そのままずるずると沈んでいく意識を手放した。

意識を手放す直前、相葉さんがぐっと抱き寄せてくれたのがわかって、……………嬉しかった。



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