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キラキラ

第37章 寵愛一身


「あいつのことだ。お前に黙ってたんだろ」


図星だった。
俺は、唇をかんで視線をさげる。

櫻井は、構えかけた剣をおろすように、冷たい雰囲気をかえた。
そして、一言一言考えるように、優しく口を開く。

「でも……それは、お前の気持ちを荒らしたくないって思ったからじゃないのか」

それも優しさだろ、と、櫻井は、最もなことをいう。

それでも俺が変な顔をしてるのをみて、何かを感じたのか、櫻井は俺の顔をのぞきこんだ。


「……お前は言ってほしかったのか?」

「……隠し事が嫌だったんです」


例え、断ってるとはいえ。
好意をもった人が松本のそばに寄ってきたのが嫌だった。


「やっぱり女の人がいいって。知らない間に思われたらどうしよう……って」


……それはないと思うがな、と櫻井は含み笑った。


「……じゃあ。それは松本にきちんと伝えないと分からない。だって、あいつはこれっぽちも悪いことしたなんて思ってない」

「…………」

「……俺に聞く前に、本人にそう言え」

「……はい」


いちいち最もだ。

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