
キラキラ
第36章 バースト10
路肩によせた雪のおかげか、低速ではあるものの確実に車は走り続け、ついに目的地の宿に到着した。
「ふぃー……ついたぞー」
「お疲れ様、松岡さん」
「ありがとうございました」
労うと、松岡さんは、にっと笑って、片手をあげた。
まだまだ元気といった感じに、安心する。
智兄が探し当てたここは、豪華なホテルでも温泉旅館でもない、アットホームな小さな宿。
駐車場は、車10台ほどしかとめれない。
中庭を通り抜けた先にある入り口は引き戸になってて。
カラカラとその扉をあけると、どこか懐かしい田舎のような香りがした。
玄関を真ん中に、中庭を囲むように、コの字形に部屋があるようで、ガラス張りの廊下からは、俺たちの他にいる泊まり客が、浴衣で歩いているのがみえた。
あとでよくきけば、海が近いから夏は海水浴客で賑わうらしい。
図書館の本棚なみの大きな靴箱に納得する。
智兄が宿帳を書いてるあいだ、俺は潤と土産物売り場を眺めて歩く。
「お饅頭だ……お腹すいたな」
手に取った箱をみて呟く潤に、それがあまりにもしみじみしていて、ぷっと笑ってしまった。
チカラも使わせたし、疲れてるんだろう。
俺も腹ペコだ。
