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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「なぁ……那須」


松本が、うつむいたままの那須に声をかけた。


「一年間、男を磨いたっていうけど……そういうことじゃないだろ」


那須は、顔をあげない。


「少なくとも……その好きなやつを手にいれるために、卑怯な真似をつかうようじゃダメだ」


俺は、黙って松本の声を聞く。
気温は高いのに、震えてる俺は、ひたすら松本にしがみつく。

その間に、倒れてた大学生2人は、精一杯の虚勢か、舌打ちして去っていった。
ヤれるっていったから来たのによ、との捨て台詞に、体が強ばったが、松本が再び背中を擦ってくれて落ち着きを取り戻す。


「好きなやつに振り向いてほしいなら、もっと堂々と勝負しろよ」

「…………」

「学校までやめて、これじゃあ辛いだろ」

「…………」



大野より、いくらか友好的な話しぶりなのは、もとクラスメートだからなのか。
淡々と諭す松本は、俺を抱き寄せる手に力をこめた。


「……ちなみにカズに手をだしかけた時点で、俺は当分お前を許す気はない」

「…………」

「おさえてんだ、これでも。……さっさと帰ってくれ」


絞り出すような声。

那須は、うつむいたまま、足早に去っていった。

次の瞬間、俺はすごい力で松本に抱き締められた。

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