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キラキラ

第35章 屋烏之愛


非難するように、那須はぽつりと呟いた。


「櫻井さん……大野に言いましたね?」

「は?言ってねーわ!」


櫻井が、心外だ、と噛みついた。
すると、大野が頭をかきながら、口をはさんだ。


「……なんも聞いてねーよ。俺が勝手に来た。翔くんが血相かえて出ていったのを見かけたら……そりゃ後を追うってもんだろ」

「……え。見てたの?」


櫻井が目を丸くする。


「見てた」


大野は、大きくため息をついて腕を組み、一歩前に出た。


「……結果、来て正解だった」


冷ややかなオーラがこの場を圧倒する。

いつだったか、一度みた底冷えするような大野の冷たい瞳。
その瞳で睨まれたら、竦み上がってしまいそうな。

那須は、青ざめた顔でその大野の圧を、必死に受け止めてるように見えた。


「邪魔しないでくださいよ……」

「……すんだろ、普通」

「櫻井さんには俺が似合ってる。一年間必死で自分を磨いたんです」

「……磨いた奴が、クソみてーな真似してんなよ」

「……俺!全然あきらめられなかった。やっぱり櫻井さんが好きなんです!」

「…………」


那須の瞳から、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。

叫びにも似たその告白は、到底受け入れられないものだろうけど……


俺は、松本にひっついて、固唾をのんでその場を見守る。

松本は大きな胸に俺を抱きこみ、背中をひたすらに擦り続けてくれていた。

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