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キラキラ

第35章 屋烏之愛


俺の上のそいつが吹っ飛んでいき、ドサリという音とともに低いうめき声があがった。


え……


涙で霞む目にうつるのは。


「……まつも……」


無言で、その大学生の上に馬乗りになり、殴り続けてる松本の姿。
一発目に蹴られたダメージで、大学生は殴られるがままだ。

それもえげつない殴りかた。
一歩間違えたらまずいやつ。


俺は、慌てて起き上がり、その体に飛びついた。


「松本さん……!」

「離せカズ。許さねぇ、こいつ!」

「だめです。ここは学校……!」


流血はヤバイ。
事件もヤバイ。


「俺は大丈夫ですから!お願い……!」


必死でとめていたら、横から別の人物が松本の腕をつかんだ。


「それくらいにしとけ」


松本の動きが止まる。
震えながら目をあげると、大野が静かに俺らを見下ろしていた。


「もうすぐ、昼飯食ったやつらが外に出てくる。二宮のためにも、騒ぎになりたくねぇだろ」

俺のため、という単語に、松本はしぶしぶ拳をおろした。
馬乗りになってる状態から、立ち上がった松本は、最後とばかりにそいつの尻を蹴った。

松本にしがみつきながら、周りをみると、櫻井をとめていた大学生は、鼻血をだして座り込んでいて。

那須が、白い顔で立ち尽くしていた。

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