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キラキラ

第35章 屋烏之愛


ポケットに手をつっこんで、入り口に寄りかかるように立ってるその姿は、はっきりいって、めちゃめちゃ画になる。

だが、笑えばものすごく優しくなるはずのその瞳は、凍てついたように冷たくて。

俺は、自分が悪いことをしてるわけではないのに、その視線を受け止めきれずに、目をそらした。


「カズ」

「……っ……はい」

「来い」


低くかけられた言葉に、俺は、観念して松本のそばに近寄った。

松本は、待ちきれないように、ぐいっと俺の腕をひき、ポロシャツの襟元を引っ張って、俺の首をまじまじと見つめた。


「…………」

「…………」


その場の空気が二度くらい下がった気がする。

松本は嘲笑うように、親指で傷をすっと撫でた。



「……なんだこれ」

「…………」

「知念か」

「違う」


さっきの可愛らしいやつが間髪いれず否定したら、


「てめぇに聞いてねぇわ」


松本は、そちらを見もせずに即座に切り返した。

俺は慌てて、


「違います!」


と、否定した。

これはもうカッコ悪かろうが、真実をさっさと言わないと、みんなが不幸になると思い、俺は、必死に説明した。
大野に助けられたことは省いて。

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