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キラキラ

第34章 バースト9


どきりと心臓が鳴る。

心の準備はできたはずなのに。

震える手をぐっと握り靴を脱いでると、リビングに続く突き当たりの扉があき、翔が顔を出した。


「ああ……智兄おかえり。……あがれよ、潤」

「うん、………お邪魔します」


そんな翔と俺のやり取りを見ていた智さんが、俺の背中をまたポンポンと、優しく叩いた。

ぎこちない俺の様子に、何かがあったと感じてくれたのか、ふっと目をやると、智さんは、気遣うような顔で小さく頷いた。

事情なんか知らないはずなのに、まるで、大丈夫、と言ってもらえてるみたいで。

……俺は、唇を噛み締めて、少し笑った。




「智さんおかえりなさい。あ、潤くん、いらっしゃい」

ソファで本を読んでたかずが顔をあげた。


「智さん、今日は早いね」

「先輩と飯に行くだけだかんな。二件目は断ったし」


ジャケットを脱ぎながら、かずと微笑んでる智さん。
俺はというと……リビングの入り口に突っ立ったまま動けないでいた。

そんな俺に気づいた智さんが、

「どうした?潤」

と、声をかけてくれる。

その横を通り抜けてきた翔が、俺のまえに、すっと立ちはだかった。
その顔は怖いくらいに、無表情。


「ちょっと来い」


そして、やにわに俺の腕をつかみ、リビングの外に引っ張ってゆく。


「おい、翔?」


智さんの驚いたような声を無視して、翔はぐいぐい俺を引っ張り、彼の自室に連れ込んだ。

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