
キラキラ
第34章 バースト9
「あ。旦那が帰ってきた。やっぱり奥さんがいると帰りが早いなぁ」
「もう……その言い方」
からかうかずの言葉に、頬が熱くなる。
好きな人の帰りを待つ立場が、そのワードの意味をより増幅させてて、なんだか照れる……。
俺は、ガサガサと意味もなく教科書を閉じたり、ページをめくったりして、翔が部屋に入ってくるまでの僅かな時間をドキドキして待った。
すると、自室に鞄をおいてから、リビングに入ってきた翔が、俺を見るなりめざとく指摘してきた。
「ただいま……って、おい、潤、顔赤いぞ?どうした?」
「え?」
そんな?
え?と固まった俺を見つめた翔が、心配そうな表情で近づいてきた。
「……なんだ?熱でもあるのか?」
言いながら俺の額に大きな手のひらを滑らせてくるものだから、思わず体がびくっとなる。
傍らで、かずが肩を震わせて笑ってるのが分かって、恥ずかしくていたたまれなくなってきた。
「なんでもない。大丈夫」
「翔さん、翔さん。大丈夫。潤くんすごく元気だよ」
早口で否定した俺を、フォローするように口を挟んだかずは、くすくす笑い続けてる。
「あー。もう。こんな二人見てたら、砂糖吐きそう…」
歌うように言いながら、かずは再び赤ペンを手にとった。
誰のせいだ?!
俺が、キッと睨んでも意にも介さず、あ、ここ間違えてる、と呟きながら。かずは採点を再開させた。
翔は、そうか?と言って、俺の頬に手を添えた。
見上げると、翔は目を細めて、ただいま、と言う。
俺は小さく、
「おかえり」
と言った。
