
Perfect Romance
第5章 一歩前へ
「あ…相葉さん?」
にのの顔が、少し強ばった
「あそこ、付き合って!」
少し離れた所に佇む、異様な雰囲気を放つそこを指差すと
「え…あそこ?」
にのの目が怯えてるのが分かる
「うん!行こっ」
今度は俺がにのの手を取って、立ち上がらせた
「待って待って待って!!」
離さないように手をしっかり握って歩き出す俺に
慌てて制止しようとするにの
「何、どうしたの?」
「や、ほら、あれじゃなくてさ、他にしない…?」
俺の読みは当たってると見た
「あれがいい」
お互い楽しくなきゃ、意味がないんだよね?
「もしかして、怖いの?」
わざと顔を覗いて反応を伺う
「…そんなわけ、ないじゃん!」
ほら、ムキになった
「そうだよね。あんな作り物、怖くないよねぇ」
んふふ。にやけちゃうよ
あまりに分かりやすすぎ
「こ…怖くないよっ」
ー…分かった、行こ!相葉さん!
にのが逆に俺の手を引いて歩き出す
強がってるけど、手汗がすごい
横顔も、思いきり強ばってるよ
先に歩き出したのは良いけど、近付くにつれて
にのの足取りが明らかに重くなっていった
あえて何も言わずに、俺は隣を歩いていく
廃病院をモチーフにしたその建物は
外観からもなかなかの雰囲気を醸し出す
…所謂「お化け屋敷」
俺、これだけは好きなんだよね
