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修練の鏡と精霊の大地

第20章 ラスボス

 力だけでは、なにも出来ない。六人が束になってかかっていったとしても、ハエをはらうように、とばされてしまう。


 なんのために、自分達はここに集まったのだろう? 輝もそれを考えていた。


 闇の帝王は球也達がいるビルに手を置き『ガフゥ〜』とため息を吐いた。


「まだ目が慣れないから、ちょっと待ってくれ。下手に動いたら、足の小指が何本あってもたりんわい」


 相当、痛かったのだろう。


 純化に押さえられている、闇の純化がモゾモゾと落ち着きがなくなってきた。


「ちょ……動かないでっ!! お尻かゆいんか?」


 純化はさらに力を入れて押さえ込んだ。


「違う! 待って、帝王の首もとを見てみろ!!」


 闇の純化は無理矢理右手を抜き出し、闇の帝王を指差した。


 純化は目を凝らして見た。


 目が見えない帝王が、ジッとしているからこそ、凝視できる。


 いつの間にやら、純化と闇の純化は、かなり近くまで接近していた。


「え、うそ!!」


 純化は驚いた。


 闇の帝王の左首筋の根元に、あの、ペタロの顔が埋め込まれていた。


「ペタロ!!」


 純化は思わず声を出した。


 闇の帝王はその声に反応した。


「んん? 誰だ?」


「ちょっと、ペタロ!! ペタロっ!!」


 闇の純化が闇の帝王の首筋にある、ペタロの顔に呼び掛ける。


「誰が呼ぶのかしらんが、わてはペタロではない。わての邪魔をするものは、今すぐにでも消し去ってやるわ」


 帝王の一人称は「わて」だった。


「おい、純化! そいつをあまり刺激するな!! いまは、分が悪い」


 コウヤは純化を呼び止める。


 だが、必要以上に、ペタロの存在に食い付いたのは、闇の純化だった。


「ペタロっ!! 私、純化!」


「純化ってなんだ? わては闇の帝王、名はプーロンだ」 


 帝王にしては、しょぼい名前だった。




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