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修練の鏡と精霊の大地

第20章 ラスボス

「あの赤いやつ、万手観音っちゅうの?」


 コウヤがそう言うと、赤い阿弥陀如来こと、万手観音の背中から100円均一の店にある孫の手のような腕が、ワサワサと伸びてきた。


「ゲッ、気持ち悪い……あいつは相手したくない」


 莉子は、駅のホームで撒かれた、酔っ払いの嘔吐物を見るような目をして言った。


「よし、あの万手観音は任せた!」とコウヤは勇樹にむかって言った。


「はぁっ!?」


 コウヤからの突然の抜擢に、勇樹は面食らっていた。


「まて、俺があのイソギンチャクを相手にするのか!?」


「相手に不足はないだろ。俺は、あのキツネ野郎とさっき一悶着あってな。悪いが、あいつは俺に譲ってくれ。それに、あの雷じいさんは球也に任せよう」


「球也にかっ!? またふざけるんじゃないのか?」


「あいつは、やるときは男を見せるんだよ」


 コウヤは勇樹の肩を軽く叩き、一歩前に出た。


「キュウっ!! あの雷じいさんはお前に任せた!」


 球也は無言で頷き、金属バットを手に取った。


<よっしゃ、うちの出番やな!>


 さっきまで石になっていたソーヤが、急に起き出した。


<みんな、これを食べるんや。うちは、このために力を蓄えてたんや!!>


 そう言うと、ソーヤはグローブほどの大きさの、もみじのような葉っぱを瞬時に出した。


<うちの生涯で二度と出せん、これ以上ない最強のパワーリーフや。これをみんな食べるんや。これやったら、やつらの妖術を跳ね返して、力も奪われずにすむ>


「相手は人間じゃねぇからな。これはありがたい!」と勇樹が手を伸ばした。


「本当は自分の力でやりたかったが、妖術を防ぐことは出来ないからな」 


 コウヤも1枚、手に取った。



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