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修練の鏡と精霊の大地

第20章 ラスボス

「てか、鏡のところ、今頃か……」とタクノアンがさらに一歩。


 二人の顔の距離は、すれすれ3cmだった。


「おい、坊や……なんか近すぎるぞ」


「口が臭いで……なた豆を使った歯みがき粉で、歯をみがきいな」


「余計なお世話じゃ。だが、もう遅い……」


「もう遅いって……歯肉炎?」


「違うっ!! 空を見ろっ!!」


 タクノアンは頭上を示した。


 赤黒くなった渦巻きに穴が開き、中から大きなモヤの塊がゆっくりと降りてきた。


「うわっ!! 歯茎に食いもんのカスたまったら、あんなんが出てくるん?」


「だから、口は関係ないっ!! 生まれ変わった闇の帝王様の姿じゃ!!」


 タクノアンは両手を高々と上げた。


 バリバリと雷のような光が手のひらから放出され、闇の帝王に吸収されていく。


「うわあっ!!」


 そのエネルギーの強さに、球也は仲間の元まで吹っ飛ばされてしまった。


 その体を受け止めたのは勇樹だった。


「おい、大丈夫か? よくあの状況でちょけれるな……」


「場の空気を変えるには、ふざけるしかない思ったけど、あのじいさん今度はマジやわ。今回ばかりはきびしいかも……」と球也は言い切った。


 その様子を見た純化が、あわててタクノアンを指差して、言った。


「あかん!! 早く、あれを阻止せんと大変なことになる」


 タクノアンが放出する雷の光が、さらに強くなった。


『ババババババッ!!』


 何万ボルトもの電流が、その手を通して放たれる音が、辺りに響く。


「この靴底は分厚いゴムだ。足元を蹴りつければ阻止できるかもしれねえな」


 勇樹は軽く足踏みをすると、タクノアンの足首辺りに狙いを決めた。


「そうはいきません!」


 突如、キツネ人間の一人が勇樹の前に立ちはだかった。


「我々、闇の神仏である、呪神コックリ参兄弟、七不福神、万手観音がお前達の相手になる」



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