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修練の鏡と精霊の大地

第20章 ラスボス

「コウヤさん、まだ闇の者はいないんすか?」


「まだ、出てない。だが、このビルの下は細かいやつがうろうろしてやがる。それに見ろよ。明かりはあの出入口の蛍光灯だけ。とっくに深夜一時過ぎてるのに、この明るさだ。まるで朝焼けだな」


「僕は夕焼けに感じます」


「そこの感性はどうでもいい。ただ、いつなにが出てきてもおかしくないってことだ」


 二人の会話を聞いて、勇樹がフンと鼻を鳴らす。


「のんびりしたこと言ってんじゃねぇ。もうすでに出てやがるぜ」


 コウヤは眉間をよせる。


「待てっ、お前になにがわかんだよ」


 勇樹の毅然とした態度が、なんとなく気に入らない。


「プロレスラーにはわからないだろう。俺は心を鍛えるための精神修行を香港の寺院で怠ってきた」


「やってねえんじゃねえか」


「冗談だ。だが、なにか違う感じがしないか?」


 コウヤは気を研ぎ澄まし、辺りをみた。


 なにかがくる。いや、なにか、自分達とは別のものがいる。


「おい佐田、いやな気配はするが、それがなんなのか、俺にはさっぱり……」


「正体まではまだつかめない。だが、いるんだよ近くに。そう感じる……コウヤ、とりあえずその場を離れるな」


「チッ、リーダー気取りだな」


 コウヤは勇樹に指図されるのは気に入らなかったが、かと言って、無茶に動き回ると莉子がうるさいと思い、素直に従った。


「いいか、その場からくまなく辺りを探せ。莉子さん、純化さん、ユング……いや、輝さん、みんな背中を合わせて、円を組むようにして今見える方向をしっかり見据えるんだ」


 勇樹の指示通りに、みんな背中を向けて円を書くように並んだ。


 球也が寄ってきた。


「ちなみに僕は?」


「キュウは俺の横に来い」とコウヤは自分の左側を空けた。その隣には純化がいる。


 上下左右、いま、自分が見える視界の範囲内を注意深く見つめる。



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