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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「3つ目、この天の世界の神様仏様に、もっと力を入れて、お寺や神社に救いを求めてくる様々な人達の願いを聞き入れてほしい」


 お釈迦様に直接頼むなら、最もな願い事である。


「4つ目は……わしを若くしてくれ」


「……」


 誰も、何も言わなくなった。これは、淀屋橋に対する球也のツッコミ待ちなのか、それとも、みんな言葉をうしなったのか?


「で、おじいちゃん、5つ目は?」


 孫、奈美からの、触れることのない返し。


 淀屋橋は、咳払いをしての5つ目の発表。


 背後では、怪物のうなり声と村人の悲鳴が響く。


「5つ目は……妖精を滅ぼして、我々を元の世界に帰してくれと……」


 ペタロは肩を落とし、うずくまった。


「ちょ……、おじいさん、なんでまたお釈迦様のところ行きはったん?」


 球也が後ろを気にしながら言った。


「いや、わしだけロープかなんかでくくられて、あのバカカラス(翼竜)がお釈迦様の元にわしを乗せて帰ってきたんじゃ。いい機会だから挨拶しにいったら、今言ったようなことになったんじゃよ」


 奈美は村を壊す怪物達を指差した。


「で、あの怪物達を連れて、妖精の町や村を?」


「うむ、結界をわしが切ってやったんじゃよ。お釈迦様はやっと本気を出したのか、今まで最強の怪物を出してのう」


 その様子を苦い顔をして、球也が見ている。


「いや、ペタロさんがみんなを説得して、俺達人間と仲良うやってこうって、言ってた矢先なんすよ。こんなん、巨大ヒーローかなんか出てこんとおさまらんで」


 止めようにも止められない。そもそも、この世界の妖精は神や仏の敵になる。怪物達は神仏たちの使いとなるもの。いま、その事実を知ったからこそ、怪物を止めることは、自分達も神や仏にはむかうことになる。


 悔しいが見ているしかないのだ。



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