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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「ん……まあ、僕が今、話せるのはここまでです」


 そう言うと、ペタロは体を起こす。


 それを純化が、止めに入る。


「あふっ、いま、おひたら、はらだにはわたらは……」


「あの、せめて飲み込んでから話して下さい。純化さんは、今度は人間の世界に戻ると、逆に対応しにくいかもしれません。ここで食べるだけ食べて、体を作っておかないと……」


「うん、だはら、いま、おなかふいて……」


 物を詰め込みすぎたのか、口からブチュッと、果汁が溢れ出る。


 そのしぶきが、ペタロにかかる。


「ちょ……やめて下さいよ純化さん……100年の恋がさめちゃいますよ……」


「えっ?」


「いや、なんでもありません。ちょっと、ベッドから出して下さい」


 ペタロはうつむきながらベッドからおりた。


 口の中のものを、スッカリと飲み込んだ純化は、ペタロの体を支える。


「ちょっと、無理したらいかんよ……」


「薬が出来たので、感染した者に飲ませるのです。敵視していても、同じこの世界で生きる妖精です。医師として、ほっとくわけにはいきません」


「そやけど、ペタロさん……」


「私は、ヌカーさんも助けます。説得して、神の下で人間達と一緒に共存できる世界にしたい」


「ペタロさん……」


 ペタロの真剣な眼差しに推され、純化は頷いて体を支え続けた。


 だが、純化は気が付いていた。ペタロが自分に好意を寄せていたことを……。



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