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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 ヌカーは、座り込んでいる純化の喉元に、剣を突き付けた。


「いいか人間よ。こいつの命が惜しければ、いますぐ村の外に出て迫ってくる怪物を打ちのめせ!!」


「いや、お言葉を返すようやけど……」と球也が話しかける。


「もう、村の人はグロッキー状態で、後はあんた一人やで」


「えっ!?」


 ヌカーは後ろを見た。


 誰一人、立っている者はなく、奈美と球也だけが、ヌカーを見ていた。


「な、なんじゃと!! 他に、他に、おらぬか!!」


「いや、あんたさっき、せっかく来てた人らを追い出したとこやんか。けど、ほっといても、あんた感染してるからヤバいで」


 球也は仁王立ちで、冷たく言った。


 さらに、奈美が矢をヌカーに向けた。


「どうする? あとはあんた一人だ。奈美ちゃんの矢があんたを狙ってる。もし、純化さんに傷をつけたら、あの矢があんたの頭に穴あけるで」


 格好をつけて言っているが、球也はなにひとつ戦っていない。 


「そんな……そんな……あれだけ人数がいたのに……」


 敗北。それも奈美と精霊だけでやられてしまった。


「わ、わしはいったいなにをしとったんじゃ……こいつを相手にしたから、調子が狂ったんじゃ……」と言いながら、球也を指差した。


「なんで俺なん?」


 球也は静かに、剣をおさめる。


 ヌカーはなにも言わず、純化をはなした。


 すると、純化はスクッと立ち上がった。


「おい! ジジィ!! よう、うちらをボコボコにしてくれたなぁ!! お礼はさしてもらうで!!」


 急に、威勢のいい純化に戻った。



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