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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 そして、ヌカーの方に、悲劇がおきた。


『ベチャッ』


「うわっ!!」


 そして、甘い香りが目の前から漂う。


 連続でヌカーの体に、オレンジ色の玉が次々に当たり、はじけていく。


「やめろっ!! うわっ!! 無駄に甘い!!」


 ヌカーは顔をそむけ、体を丸くする。


 甘い香りの正体。どうやら、超熟した柿のようだ。


「いまだ!!」


 剣を持って、球也が走る。


 滑る。


 転ぶ。


 痛い。


「こるぁーっ!! 果実の精霊!! 出すものをもうちょい考えろやっ!! 俺の背中までぐちゃぐちゃやんけ!!」


 さくらんぼが降ってきた。


「もっと武器になるやつ!! イガグリでええやん!! やつらに投げたれ!!」


 球也は盾を傘代わりにした。


「転んでから、盾の存在を思い出したわ。使う用途なかったもんなぁ」


「おのれ、ふざけやがって……」


 ベトベトになったヌカーが立ち上がる。


「おっと……いちびってる場合やないわ。真剣にやらんと消される」


 いよいよその時か……。一度も剣を交えずに終わりたいが、そうもいかないようだ。


『ドドドドドドド』


 突然、地鳴りがした。


『チャンス!!』と球也は思った。


「おい、待て!! 地震じゃないのか!?」


 球也は、かなりわざとらしく辺りをキョロキョロしはじめた。


「なに?」


 ヌカーは立ち止まる。


『ドドドドドドドド』


「ほらほら、この音が……」


「むっ?」


 ヌカーは村の入り口に目を向けた。


 険しい表情から、徐々に笑顔に変わる。


「アッハッハッハッ、そうか、そういうことか。安心しろ、お前達の負けだ」



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