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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「やるなぁ……ほんなら、俺も負けてられへん!! こい、ジジイ!!」


 ヌカーはかなり本気で剣を振り回してきた。


「うわわわっ!! 危ね危ね危ね!! 待て!! ジジイ、切れたらどないすんねん!!」と球也はあわてて距離をとった。


「ほざくなっ!! 切れるからこそ剣ではないか!!」


「わかるけど、そないに本気出さんでもええやろがっ!!」


「本気を出さなければ、やられるではないかっ!!」


「わかる。それは、わかる。せやけど、ちょっとは話し合いを設けるくらいの心の余裕をもちなはれ!!」


「お前の話の罠にはのらん!! 問答無用じゃ!!」


「確かに!!」


 再び剣を向かえ合う。


 球也は思った。仮に自分が、最強のエクスカリバーを持っていたとしても、剣術の腕も心得も無い自分になにが出来るのだと……。


 そもそも、そんな自分に勇者の剣などと言うものを持たされても、扱いがわるければ、これがダイヤモンド製だろうが紙製だろうが同じことだ。


 それにくらべて、ヌカーの構え方は腰が入り、缶コーヒーの空き缶製の剣が、スターウ○ーズのビームサーベルに見える。


 俺、勝てるのか? 神の精霊を出そうかな? 出すか出さないかの葛藤が球也を迷わせる。


 やがて、「うわぁーっ!!」という悲鳴と『グチャッ、ベチャッ』という音が耳にはいる。


 それと同時に、鼻には甘い香りがついてくる。


 ヌカーが剣を握り、球也に向かってきた。


 剣を持った球也は、ややへっぴり腰だ。バットとはわけがちがう。




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