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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「いや、人間だったら、この世界にいたら……死んだら消えるんちゃうかなぁ〜って……それしか、わからんわい」


 とりあえず、ヌカーは答えるだけ答えてみたが、正直、球也とは絡みたくなかった。


「なら、なぜ殺した!!」


 怒りで涙が溢れる。球也は剣先をヌカーに向け、歩み寄った。


「待って……」


「!」


 ペタロが球也を制止させた。


「なんで、止めるんっ!? あいつを……あいつをーっ!!」


「待って下さい……私が止めを刺します」


「えっ!?」


 ペタロは振り向くと、アビラの水の容器を示した。


「この水は……ワラワラの病原菌を破壊し、感染をおさえる薬を作るために必要な水だ。この水のありかを知っているのは私しかいない……教えても、無事に取りに行けるのも、私だけだ」


 ペタロはふらつきながらそう言った。


「ほう……そいつは頼もしい。さすが、この世界で唯一の名医とされるペタロだ。お前さん、早速だが薬を作るがよい」


「もう少ししたら熱が上がる。熱が出たら、間違いなく感染している」


「感染……」


 ヌカーはいましがたペタロと純化を捕らえていた村人を見た。


 その村人は、ヌカーが連れてきた者達。当然、この村に、ワラワラの感染者がいることを知らなかった。


 村人の顔色が徐々に赤くなり、汗が吹き出ているのがわかる。


「うぉっ!! こりゃいかん……ペタロ、一刻も早く薬を……」


 ヌカーは民家を指差し、ペタロに薬を作るように促す。


 ペタロはフラフラと歩き出した。


 そして、飛び付くようにして、ヌカーの体にガッシリと抱き付いた。


「うわぅ!!」


「ひとつ聞く……孫を殺したって言ったな……殺したあとどうなった?」


「やめろ……離せ、感染する……」


「言えっ!!」


「えぃ、うっとうしい……普通に死んだ! いい加減、離れろ!!」


 ヌカーはあわてて、ペタロを引き離そうとする。


 ペタロ自身、もう力が残ってないのか、簡単にヌカーから離れた。


 だが、ペタロはそれだけでは終わらなかった。



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