テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 ペタロは水を受け取り、ユングの動きを目で追った。


 ユングは真横にくの字で倒れた。


 胸に剣が刺さった状態で……。


「ユ、ユングさん……」


 突然の状況に、ペタロはヒザをついた。


 横にいた純化はショックのあまり、地面に座り込んだ。何かを言っているのだが、病に症状なのか、声帯が麻痺し、声が出ない。


 その様子を見た後「でかした」と言わんばかりに、ヌカーが後ろを向いて笑った。


 誰かがユングに目掛けて、剣を投げたのだ。


 球也は戸惑ったのか、少し間がたってから動いた。


「ユングさぁーんっ!!」


 球也はユングの元に駆け寄った。


 ペタロはユングの体に手を添えた。辛いのか、悔しいのか、目を閉じて下唇を噛んだ。


「なぜ、こんな目に……」と球也は声を震わせる。


 すると、ユングの体は、やがて霧のようになり、跡形もなく消滅した。その間、わずかに数秒ほどだった。


「え……ユングさん……ユングさぁーーん!!」


 刺さっていた一本の剣と、身につけていた物を残し、ユングの体は完全に消えてしまった。


「え……なんで消えたん……なんで?」


 なぜユングの体が消滅したのか? 


 訳がわからないまま、球也は剣を抜いた。


 奈美は茫然とその様子を見ていたが、ワナワナと体を震わせ、やがてゆっくりと弓を構えだした。


 球也は剣の先をヌカーに向けた。


「ヌカーっ!! きさまっ!!」


「ん? 私をその剣で刺すか? 私がいなくなっても、他の村や町の長がお前さんの敵となる」


「そんなことは聞いていない!! なんで、消えたっ!? 説明せいやっ!!」


「えっ、そこ?」


 ヌカーは意外な質問に戸惑った。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ