テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「よかろう……私も感染しているおそれがあるからな。まず、それを渡せ」


「いや、まずお前が二人をここに立たせろ。同時に俺が水を持ってペタロに渡す。武器はもたない。これでいいだろう」


 ユングはそう言ったあと、すぐに球也の方を見た。


 球也は無言で頷いた。


 奈美も、口をキュッと閉めたまま頷いた。


 ヌカーはペタロと純化に、ここに立つように命じた。


 ペタロはヌカーを睨み付ける。


「おや、ペタロ。なぜ、そんな目を私にむける? これから我々の新時代が始まるというのだぞ。もっと喜ぶべきではないか?」


 それを聞いたペタロは、病と怒りで息を荒くした。


「お前は、この村の村長を殺してよくそんなことが言えるな……今を黒く染めなきゃ、やって来ない時代なんて、そんなものを迎えるわけにはいかない」


「それは、今だから言える。時代が変われば、お前の気持ちも喜びに変わる。ここの村長は、聞けば人間と妖精との間で、産まれ育ったそうじゃないか。この世界に人間の遺伝子は必要ない。だから、始末した。ついでに、うちの孫のラッキオも人間との間に出来た子供なのだ。かわいそうだが、始末したよ」


「クッ……悪魔が」


 ペタロはヨタヨタとふらつきながら、純化の手を握り、ユングとヌカーの間に立った。


 ユングはヌカーの様子をうかがいながら、ペタロに水の入った容器を差し出した。


「すまない。もう少し早く届ければ……」


 ユングはそう言った。


 ゆっくりと倒れながら……。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ