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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

 村人が、一人、二人、三人、四人と次々に起き出した。


 その目は「よくもやったな」ではなく、「もう、勘弁してくれ」と訴えている目だった。


 だが球也は、相手が「まだ負けてないぞ」と言っているように感じ取っていた。


「やるしかないか……」


 球也は剣を抜いた。


 奈美は弓を構えた。


 ユングはただひたすら、ニコーを蹴りまくっている。


 倒れていた村人の八割が起き上がった。


 先に動いたのは球也だった。


 剣をバットのように構え、向かっていった。


 奈美は矢を引いた。


 ユングは蹴りつかれて、ニコーの頭を叩きはじめた。


「そこまでだ!!」


 また、どこからか、声がした。


 球也はあわてて立ち止まった。


 ユングは「バカ野郎、その手にのるか!!」とニコーをパシパシと叩きまくる。


「イタタタタ!! 違う違うって!! 俺じゃねぇ!!」


 だが、ユングはなにかを感じ、その手を止めた。


 ユングの目先に、太い杖を片手に持ち、目と口が隠れるほどの白い眉毛とヒゲをたくわえた老男性がいた。


 全身に大きな茶色いポンチョのようなものをまとっている。


「なんだ、あのじいさん?」


 ユングはニコーから離れ、球也の元に寄った。


 見た目は90をこえてるであろう老人だが、なにかただならぬオーラがふつふつとわき出ていた。


 その老人は、杖の先で球也を指すと、口をモゴモゴさせながら言った。


「なにかと思ったら、我が村から出た勇者様ではないですか……つい、この間ぶりですな」




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