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第19章 恋の切なさ

「あたしアイス御馳走してあげる♪」

近くのコンビニへ寄って、アイスとウーロン茶を買った。あたしたちは誰も居ない砂浜に降りて、腰を下ろした。

「真啓のどんなピアノでもあたしは好き…大好き。応援はしない。されると疲れちゃうでしょう?だから、ずっと見てる。ちゃんと見てる。真啓のピアノ。」

いつも真啓に助けられてばっかりだ。今回はあたしが真啓を助ける番のような気がした。

「華…ありがとう。」

硬いあずきバーをかじり乍ら、落ち込んでいる真啓の隣に座った。

「思ったように弾けないんだ。今までは、完璧では勿論無いけど、それなりに解釈して弾けたんだけど、判らなくなっちゃったんだ。」

真啓は自分のビーチ・サンダルをじっと見ていた。

「練習も大変だと思うけど、自分の好きな曲を弾いてみたら?欝々としているんだったら、とことん欝々とした曲を弾くとか?絵画も音楽も、その時にしか描いたり弾けない曲ってあると思うんだ。その時の心情とか…。」

「心情?」

真啓は、はじめてあたしの顔を見た。

「うん…普段弾いてた曲が弾けなくなったんだったら、違う曲弾けば良いじゃない?もしかしたら今なら弾ける曲があるかも知れないよ?」

「例えば?」

「ショパンの革命とか、木枯らしとか、ベートーベンの27番第3楽章とか、スクリャービンのエチュードの…何番だっけ?」
「Op8-12かな?」

「うーん弾いてくれないと判らない…けど、ちょっと凄い指が頑張ってる感があるヤツね。」

真啓が声を出して笑った。

「だって表現できないんだもの仕方が無いじゃない。」

…やっと笑ってくれた。

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