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第19章 恋の切なさ

「ピアノが弾けないんだ。」

真啓は苦しそうに言った。その意味をあたしは理解した。

…感情が入らないとか解釈の変化に悩んでいるんだ。

「真啓のピアノ…混乱してる。」

あたしにはそれだけは判った。迷走とか苦悩とかそんな言葉がぴったりだった。

「やっぱり華ちゃんは凄いや。」

真啓は大きな溜息をついた。良く見ると、真啓の爪に血が滲んでいた。

「血が出てるよ。」

真啓は指を見て本当だと言って悲しそうな顔をしていた。

「ねぇ真啓、気分転換にお散歩しに行かない?ふたりで秘密のデート♪」

「えっ?今…から?」

「うん♪今から。」

あたしは、リビングに居る真啓パパに声を掛けた。春さんはもう寝ちゃったらしい。台所で絆創膏を指に貼ってあげた。

「こんなになるまで弾かないといけないの?」

「気がつかないうちにこうなってたから。」

真啓とあたしはリビングへ行った。

「真啓のお父さん。あたしたちちょっとこれから散歩に行ってきます。」

ソファに座ってテレビを観ていた真啓パパは、真啓とあたしの顔を交互に見た。

「そっか…気を付けてね。真啓持ったか?ちゃんとしなきゃ駄目だぞ?良かったら母屋を使え。」

笑って真啓にウィンクをした。

「お…お父様っ!」

真啓の手はずっとピアノを弾き続けて居たせいか熱を持っていた。

「華ちゃん…宜しくね。」

「はい♪1時間ぐらいで帰って来ます。」

あたしたちは、堂々と玄関から外へ出た。

「ねぇ海を見に行かない?」

あたしは、真啓の手をしっかりと握ってぐんぐんと先を歩いた。

「えっ…う…うん。」

下り坂でふたりともどんどん早足になった。

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