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第19章 恋の切なさ

「ねぇ…真啓くんどうしちゃったんだろうね?」

リツが心配そうに真啓が弾くピアノの音を聞きながら言った。あの日以来、真啓は長時間ピアノを弾いていた。朝、真啓を除いた3人で海へ遊びに行き、夕方戻って来ると、まだ練習をしていて、そんな日が数日続いた。

「華…なんかしたの?」

リツが浜辺に寝転がりながらあたしに聞いた。

「なっ…なんかって何よ?」

あたしは一生懸命考えてみた。

「真啓くんを怒らせるようなこととか?」

…えっ。

「わ…判らないよ。」

いつも優しい真啓が、確かにおかしかった。思いつめたようにピアノに向かっていた。
あたしは、そっとピアノの部屋を覗いた。声を掛けず、ソファに座って静かに聞いて居た。その音色はいつもとは違い、粗削りで猛々しい印象を与えた。

…なんか真啓のピアノじゃないみたい。

これまでは力強さや瑞々しさはあっても慈愛に満ちた優しい音色だった真啓のピアノが全く変わってしまっていた。普段なら、すぐに気が付いてにこにこと笑う真啓が、あたしが居ることにも気が付かず、一心不乱に弾いていた。

…いつもと同じ曲なのに全く違った風に聞こえるなんて。

あたしは携帯で録音をした。数十分経ってから、真啓はあたしが居ることに気が付いてハッとした。

「華ちゃん…ごめん気が付かなかった。」

…真啓が無理して笑ってる?

「真啓…どうしたの?いつもの真啓と全然違う。」

あたしはピアノの事なんてさっぱりわからないけれど、すっかり変わってしまった曲想に真啓も戸惑っているような気がした。

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