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第16章 カレントが運んだ切ない夜

僕は、躊躇せず華を抱え上げた。その体はとても冷たかった。暖かい砂浜の上に華を寝かせた。

「華ちゃんちょっと待っててね!」

別荘を管理してくれているケンタが、ここの洞窟の事をいつも話して聞かせてくれた。洞窟の中へ入ると少し涼しかった。

「ここにあるって言ってた筈。」

自然に出来た小さな祠がここにはいくつもある。その祠のひとつには船の安全や海の神様と言われるワタツミを祭ってあり、その隣の洞窟の入り口には、緊急用とかかれた大きな鉄の箱が置いてあった。

「これだ。」

僕は大きな蓋を開けると、その中には水が入ったペットボトルや、塩のアメ、毛布、乾パン、ライター、無線機、ラジオ、救急箱、懐中電灯などが入っていた。

半年に一度、町の人が中のものを点検しに来ることになっていた。ここに住んでいる人達は、子供の頃からの場所のことを聞かされていた。

僕は必要なものを取り出し砂の上に置いた。華のところに戻ると抱え上げて、冷たい身体を保温シートと毛布にくるんだ。

「すぐに温かくなるからね。頑張ろうね。」

意識が朦朧としているようだった。洞窟へと華を運んだ。

「華ちゃん…。」

毛布の上からでもガタガタと震えているのが判る。

「さ…む…い。」

暫くすると雨が降り出し、それは雷と共に土砂降りになった。無線機に電池を入れ、箱に掛かれた番号に合わせる。何度か話掛けて、暫くすると、無線機からノイズが入った声が聞こえて来た。

(真啓…かい?)

…ケンタさんだ!

「はい。華も僕も無事です。」

(嵐で…。)

たどたどしい言葉を何とか拾った。僕は何度か同じ言葉を繰り返した。

…そうか船が出せないのかも知れない。

僕はラジオをつけた。天気予報は、夜遅くまで雨が続くと言っていた。ここに居ることさえ伝えれば、必ず迎えがやって来ることは判ってる。

けれど、華が心配だった。先ほどよりも少し良くなったのか、ガタガタと震えてはいるものの、僕を心配そうに見ていた。

「華ちゃん大丈夫だからね。」

ここに居れば雨風も防げる。潮の満ち引きにも心配無かった。

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