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第16章 カレントが運んだ切ない夜
岸までの距離は1キロぐらいありそうだった。
「テトラポットの方へ泳げば良かったんじゃない?」
「テトラポットや波止場の周りは、入り組んでいるから潮が渦になってたりして、一旦入り込むと出られなくて溺れることがあるんだよ。だから近づいじゃいけないんだ。」
…だからみんな反対の方向を指さしていたんだ。
「離岸流が見えたから3人で止めたんだけど、ごめんね。分かり難かったよね。」
真啓が済まなそうに言いながら、あたしの浮き輪を引っ張りながら泳いでいた。
「あたし…何も知らないのに…勝手なことして本当にごめんなさい。」
「もう謝らないで?心配ないから。それより大丈夫?顔色が悪いよ?」
気が付かないうちに体がガタガタと震えていた。
「真啓…なんかホッとしたのか、体が怠くって。」
一生懸命岸に向かって泳いだのがいけなかったらしい。
「疲れちゃったね。この裏に、海岸があるんだ。そこまで泳ごう。僕が連れてってあげるからね。心配ないよ。」
「うん…真啓ごめんね。」
まるでプライベート・ビーチのようなその場所は、砂利と砂が入り混じったような小さな浜辺だった。
「大丈夫かい?」
あたしは自力で立ち上がることが出来なかった。
「ご…めん真啓。あたしちょっとここで休む。」
なんだか突然眠たくなってきてしまった。
「華。こんなところでダメだよ。ごめんねちょっと抱っこするよ。」
真啓はあたしのことをひょいと横抱きにすると軽々と温かい浜辺の上へ移動し、あたしを寝かせた。夏場だと言うのにガタガタと震えていた。
「華ちゃん身体がこんなに冷えて…。」
先ほどまでお天気だった空に入道雲が出て来て風が吹き始めていた。
「ま…ひろ…寒いし…眠い。」
「華ちゃん!寝ちゃ駄目だ。ちょっと待ってて。」
…うん。
真啓の走っていく背中眺めていたあたしの視界はぼやけ始めていた。
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