
異彩ノ雫
第256章 恋文 (三十三)
…突然に君の消息を目にしたよ
機内で読んだ情報誌
いつもは手にすることのない雑誌を
開いたことさえ何かの導きなんだろうね
そこで君は
舞台女優に贈られる
賞の受賞者と紹介されていた
あの別れの日
── 恋しくてならない人がいるの
そう言って
俯いたまま唇を噛んでいた君が甦った…
そして
インタビュー記事の君の言葉
舞台が恋人、だと
今までも これからも
愚かにも 僕は初めて
あの時の
言葉の意味を知ったんだ…
ねえ、君
忘れることなどできなかった人
今
心からの喝采を贈らせてくれないか
(了)
