
天然執事はいかがです?
第5章 手作りお弁当
今日の稽古は先生の事情により無しになったので、まっすぐ家に帰り、私はすぐにアルトさんの姿を探した。
アルトさんは私の部屋にいた。
「アルトさん!!」
「はい、何でしょうか?」
アルトさんは相変わらず、忙しなく働いていた。
私の部屋の床にモップ掛けたの何回目?
と訊きたくなるくらいに、床は輝きすぎていた。
「働きすぎじゃ……?」
「そんなことありませんよ?」
「…じゃなくて!!
お弁当スッゴく美味しかった!!
わざわざありがとう!!」
アルトさんは私の気迫に驚いたのか、ポカンとしていたが、すぐに笑ってくれた。
「ありがとうございます。それは何よりです。
菜月お嬢様に喜んでいただけて、私は幸せ者ですね」
ニッコリとアルトさんは微笑んだ。
「これからも毎日作って差し上げますね」
端正な顔立ちに笑顔が溢れる。
「……ッ」
「菜月お嬢様?」
「な、何でもない……!!!」
私は急いで部屋から出て、壁に寄りかかった。
頬に手を添えると、ほんのり熱かった。
あの人はなんて恥ずかしいことを言うんだろ……
お陰で大いに照れてしまった…
天然って……こわい…
