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なぜ?

第12章 秘密2

ある日、名津子の家から歩いていける距離にあるライブハウスでやることになった。
チケットはあっという間に完売し、名津子はチケットを取り損ねた。

「ごめんな。融通効かせてやりたいんだけど…」
「えっ!?何言ってんの!?それってズルだよ?」
「名津子は特別だろ?」
「それとこれとは別。みんなが一生懸命に申込してんのに、コネでチケットとるなんて変だよ!」

コネを主張するやつらに囲まれてたから何となく当たり前だと思ってたけど、
そうだよな、みんな正規で取ってんだもんな。
名津子にとっての当たり前は、感覚が鈍った俺にとって新鮮だった。

「それにねジュノ。私ね、ママに今日のお手伝い頼まれてんの。」
「え?知り合いなの?」
「うん。私、元々あの店の常連なの。厨房が忙しいから手伝って、て。だから、ステージは観れないけど、声は聞こえるよ。」

客席じゃなくても同じ店に名津子がいるっていうだけで、俺はうれしかった。



いつも通りミンヒョンのピアノでライブが始まる。

お客さんも座ったまま。ペンライトも団扇もない。
俺たちもダンスもなく、衣装チェンジもなかった。

曲もゆったりとしたバラード中心だ。

いつものコンサートとはまったく違う流れに、最初は戸惑ったがだんだん慣れてきて、俺とミンヒョンの新たな可能性がみえた。

それを名津子に聴いて貰えることがとてもうれしかった。

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