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なぜ?

第5章 癒し

部屋に戻ったらちょうどテクヒョンから電話が入った。

「もしもし。」
「もしもしジュノ?今大丈夫?」
「うん。何?」
「あれ?名津子は?」
「部屋。」
「一緒じゃないのか?」
「うん。」

電話の向こうで悶えるような笑いが聞こえる。

「ねえ、テクヒョン。何かさ声が響くんだけど。まさかスピーカーでみんなが聞いてるなんてことないよね?」

…鋭い。ジュノの言う通り、俺たちはみんなで聞いてる。

「そっそんなはずないだろ。どうしたんだ?ヒョンが聞いてやるぞ。」
「テクヒョンじゃな~」
「おいっ。どういう意味だ?」
「うそうそ…………名津子にさ、逃げられた。」
「えっ?!ジュノ、もう襲ったの?」
「違うし!恋人になりたいって言ったら、トップアイドルがオバチャンと付き合うなだって。俺、名津子のことオバチャンだと思ってないんだけど。」
「ジュノ。名津子は絶対にジュノのことが好きだぞ。」
「何で?何でそんなこと言い切れんの?」
「昨日、ジュノが行方不明になったとき、ものすごい天気が悪くなってきただろ?そんなときに馬で知らないところを走るなんて、命懸けだぞ。もしかしたら自分が遭難するかしれないんだ。でも、名津子は自分のことよりジュノを優先したんだ。わかるだろ?ジュノはちゃんと名津子に愛されてるよ。」
「じゃあ何で?俺も好きだって言ってるのに。」
「好きだからだろ。ジュノの負担になりたくないんじゃないのか?」
「負担って、俺の方が負担なのに。」
「とにかく、名津子に側にいてほしいってことを伝えてみろ。好きとかどうのとかはほっといて。」
「わかった。」
「じゃあな~、頑張れよ!」

…手のかかる弟だな。

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