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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

俺はジーの肩を抱いた。

ジーはビクッとして体を硬くした。

構わず抱き寄せると、ジーは力一杯俺を突き放した。

ジー「帰ろ…。潤、明日も仕事でしょ?」

そう言うと、すたすたと車に戻って行った。

潤「なんだよ…!」

帰りの車中は、無言だった。

ジーはずっと窓の外を見つめていた。

三宮付近まで帰ってくると、もう夜遅いのに開いてる洋菓子店を見つけた。

潤「あのケーキ屋、こんな時間までやってんの?」

ジー「あ…、三宮にはいくつかあるのよ。夜中まで開いてるケーキ屋さん。」

潤「いいじゃん、寄ってこ。」

俺は車を停めて店内に入った。

潤「チョコレートのケーキ、ある?」

俺が店員に聞くと、ザッハトルテを出してくれた。

ジー「チーズケーキも美味しそうだよ。ベリーのケーキも。」

ジーはショーケースの色とりどりのケーキに目移りしていた。

さっきまでムスッとしていたのに、もう機嫌が直ったみたいだ。

潤「俺、チョコしか食わねーし。」

俺は店員にザッハトルテのホールを包んでもらった。

受け取ったザッハトルテはずっしりと重みがあった。

ジー「ホールなんて、食べきれないよ。」

俺はジーの声を無視して、すたすたと車に戻った。

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